特定商取引法の住所表記、個人は自宅を書かないといけない?省略できる条件を整理

書類を手に取る様子 ネットショップ開業
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※ この記事は広告を含みません。法令の一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の判断は専門家にご相談ください。情報は2026年9月時点のものです。

ネットショップを開こうとして、最後に手が止まるのが「特定商取引法に基づく表記」です。氏名と住所と電話番号を書く欄がある。自宅で運営しているから、自宅の住所を書くことになる。それが誰でも見られる状態で公開される。

抵抗を感じるのは当然です。実際、この不安で開業をためらう人は少なくありません。

結論から言うと、条件を満たせば自宅住所以外の表示で足ります。ただし「書かなくていい」わけではなく、消費者庁が示している条件があります。この記事では、何が義務で、どこまで代替できるのかを整理します。


結論

  • 原則として、氏名・住所・電話番号の表示は必要
  • ただし、条件を満たせばバーチャルオフィスやプラットフォーム事業者の住所・電話番号で足りる
  • あるいは、「請求があれば遅滞なく提供する」旨を広告に記載する方法でも省略できる
  • やってはいけないのは、架空の住所を書くこと、連絡の取れない番号を書くこと、そもそも書かないこと

以下、それぞれ詳しく見ます。


そもそも何を表示する義務があるのか

通信販売を行う事業者は、特定商取引法にもとづき、広告に一定の事項を表示する義務があります。事業者情報については、施行規則により次の3点が求められます。

項目内容
氏名または名称個人事業者なら戸籍上の氏名。屋号だけでは足りない
住所現に活動している場所
電話番号確実に連絡が取れる番号

ここで押さえておきたいのは、住所と電話番号の要件が「実在すること」ではなく、「連絡が取れること」である点です。この考え方が、後述する代替手段の根拠になります。

副業でも、個人でも同じ

「趣味の延長だから」「副業だから」という理由で免除されることはありません。継続して商品を販売するなら、事業者として表示義務が生じます。

法人でなくても、開業届を出していなくても同じです。表示義務は「事業として販売しているか」で決まります。

なぜこの義務があるのか

購入者にとって、通信販売は「相手の顔が見えない取引」です。届いた商品に問題があったとき、連絡先が分からなければどうにもなりません。

つまりこの義務の目的は、責任の所在を明らかにすることです。この目的から逆算すると、次の話が理解しやすくなります。


自宅住所を書きたくない場合の3つの方法

方法1:バーチャルオフィスやプラットフォーム事業者の住所を使う

消費者庁は、一定の条件のもとで、プラットフォーム事業者やバーチャルオフィス運営事業者の住所・電話番号を表示することを認めています。

満たすべき条件は3つです。

  1. 事業活動が、そのプラットフォーム上で行われていること
  2. その住所・電話番号が取引時の連絡先としての機能を果たすことについて、事業者と運営事業者の間で合意していること
  3. 運営事業者が、事業者本人の現住所と本人名義の電話番号を把握しており、確実に連絡が取れる状態にあること

要するに、「本人には辿り着けるが、購入者に自宅を晒さなくて済む」状態が担保されていればよいという考え方です。

ここで注意が必要なのは、この仕組みは運営事業者側の協力が前提だという点です。バーチャルオフィスを契約すれば自動的に条件を満たすわけではありません。契約する前に、そのサービスが特定商取引法の表記に対応しているか、明示的に確認してください。対応を明記しているサービスもあれば、対応していないサービスもあります。

また、条件を満たしていても、運営事業者か事業者のどちらかが不誠実で消費者が連絡できない状態になれば、表示義務を果たしたことにはなりません。住所を借りたら終わり、ではないということです。

どのサービスが対応しているか、そしてネットショップ用途で実際いくらかかるかは「ネットショップの特商法表記にバーチャルオフィスは使えるか|3社を「屋号・電話番号・転送料」で比較」で3社を比較しました。屋号宛の郵便を受け取れるか、電話番号が付くかで総額が変わります。

方法2:請求があれば遅滞なく提供する旨を記載する

あまり知られていませんが、こういう方法もあります。

広告に「消費者の請求があれば、遅滞なく書面またはメールで表示事項を提供します」と記載し、実際に請求があったときに対応できる措置を講じている場合、表示を省略することができます。

ポイントは「遅滞なく」の解釈です。消費者庁は、購入の判断に先立って十分な時間的余裕をもって提供することとしています。つまり、請求されてから何日も放置するような運用は認められません。

この方法は、請求が来たら結局は開示することになるので、自宅住所を絶対に知られたくないという目的には向きません。ただし、「誰でも見られる状態でネット上に常時公開される」ことは避けられます。そこが不安の本体である場合は、選択肢になります。

方法3:事務所を借りる、屋号で契約する

コストはかかりますが、確実です。コワーキングスペースの住所利用プランなど、月数千円から使えるものもあります。

ただしこの場合も、方法1と同じくその住所が連絡先として機能するかを確認してください。郵便物の転送に対応していない、あるいは受取だけで通知がない、といったサービスでは要件を満たしません。


やってはいけないこと

ここは明確です。

  • 架空の住所を書く — 虚偽表示にあたります
  • 繋がらない電話番号を書く — 「確実に連絡が取れる番号」という要件を満たしません
  • 表記自体を設置しない — 義務違反です
  • 番地を省略して市区町村までにする — 現に活動している場所を特定できません

特定商取引法に違反すると、行政指導や業務停止命令の対象になります。それ以前に、表記が不備なショップは購入者から信用されません。カートサービスによっては、表記が未設定だと販売機能が使えないところもあります。

「バレなければ大丈夫」という発想で始めると、事業として続きません。ここは正面から処理してください。


実際の記載例

自宅住所を使わない場合の記載例です。

【特定商取引法に基づく表記】

販売業者:山田 太郎
運営統括責任者:山田 太郎
所在地:〒000-0000 東京都◯◯区◯◯1-2-3 ◯◯ビル4F
    (◯◯バーチャルオフィス)
電話番号:00-0000-0000
     (受付時間 平日10:00〜17:00)
メールアドレス:info@example.com

販売価格:各商品ページに記載
商品代金以外の必要料金:送料、決済手数料
支払方法:クレジットカード、コンビニ決済、代金引換
支払時期:注文確定時(代引きは商品受取時)
引渡時期:ご注文から3営業日以内に発送
返品・交換:商品到着後7日以内にご連絡ください。
      お客様都合による返品の場合、送料はお客様負担となります。
      ただし不良品・誤配送の場合は当方が負担いたします。

返品条件を必ず書いてください

見落とされがちですが、これは実務上とても重要です。

返品の可否と条件を表示していない場合、購入者は商品到着後8日以内であれば返品できることになります(送料は購入者負担)。返品を受け付けない方針なら、その旨を明確に書く必要があります。

書かないことで返品を防げるわけではなく、書かないほうが不利になります。


アフィリエイトサイトやブログの場合はどうか

自分で商品を販売せず、他社の商品を紹介して紹介料を受け取る形(アフィリエイト)の場合はどうでしょうか。

特定商取引法の通信販売に関する規定は、自ら商品やサービスを販売する事業者を対象としています。紹介するだけで販売主体でないなら、原則として特定商取引法に基づく表記は不要という整理になります。

ただし、この場合も次の2つは必要です。

  • プライバシーポリシー — アクセス解析や広告配信でCookieを使うため
  • 広告であることの明示 — 2023年10月から、広告であることを隠して宣伝する行為(ステルスマーケティング)は景品表示法違反です

自分でデジタル商品を販売したり、有料note等を売り始めた時点で、販売主体になります。そのときは表記が必要になるので、事業の形が変わるタイミングで見直してください。


実務でどうしていたか

実務では、文面をゼロから考えたことはほとんどありません。主要なカートサービスは特商法表記の入力欄をあらかじめ用意しているので、それに沿って項目を埋めていくのが基本です。自分で書式を組み立てるより、項目の抜けが出にくくなります。

その前提で言うと、購入者から住所や電話番号について問い合わせを受けたことは一度もありません。表記は「読まれるため」というより「不備を指摘されないため」に整えるもの、というのが実感です。ただし、ひな形を埋めて終わりにはしないでください。とくに返品条件は、自分の運用に合わせて書き直さないと実態と食い違います。トラブルが起きたときに効くのはこの一項目です。


まとめ

  • 通信販売では、氏名・住所・電話番号の表示が原則として必要。個人でも副業でも同じ
  • 住所は「現に活動している場所」、電話番号は「確実に連絡が取れる番号」であることが要件
  • 条件を満たせば、バーチャルオフィスやプラットフォーム事業者の住所・電話番号で代替できる
  • その条件は、①事業活動がそのプラットフォーム上で行われていること、②連絡先として機能することの合意があること、③運営事業者が本人の現住所と本人名義の電話番号を把握していること
  • 「請求があれば遅滞なく提供する」旨を記載する方法でも省略できる
  • 架空の住所、繋がらない番号、表記なしは違反。ここは正面から処理する
  • 返品条件を書かないと、8日以内の返品を受けることになる

自宅住所を公開したくないという理由で開業をためらう必要はありません。方法はあります。ただし、どの方法を選ぶにせよ「購入者が確実に連絡を取れる状態」は必要です。そこだけは省略できません。

バーチャルオフィスを検討する場合は、特定商取引法の表記に対応しているかを必ず確認してください。対応可否はサービスによって異なります。

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この記事について

筆者はWebマーケティング・EC運営のフリーランスとして、複数のブランドで自社ECおよびモール店舗の運営に携わっています。本記事は消費者庁「特定商取引法ガイド」および特定商取引法施行規則にもとづく一般的な整理であり、法的助言ではありません。個別の判断については、最新の法令および専門家の見解をご確認ください。

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