注文が増えてくると、ネットショップの作業時間の多くを占めるのが検品・梱包・出荷です。人を増やすのが難しいとき、選択肢になるのが機械やシステムで作業を減らす投資で、その費用を支援するのが中小企業省力化投資補助金です。
この記事では、ネットショップの出荷・梱包作業に省力化投資補助金が使えるのかを、公式の製品カテゴリ一覧と公募要領で一つずつ確かめます。結論からいうと「使える」のですが、使えるかどうかより、割に合うかどうかのほうが先に問題になります。
この記事の結論
- 「封函機」という製品カテゴリは存在しない。テープ貼りまで自動化する機械は「段ボール箱製函機」という名前で登録されている(登録3件)
- 出荷・梱包で小売業が対象業種に入っているカテゴリは、段ボール箱製函機・組立函自動製函機・オートラベラー・検品・仕分システムなど。一方でパレタイズロボット(47件)やパレットストレッチフィルム包装機は小売業が対象業種に入っていない
- カタログ注文型の補助上限は従業員数別。5人以下は500万円(大幅な賃上げで750万円)、補助率は1/2以下。2026年3月19日の制度改定で200万円から引き上げられた
- 価格の目安と上限を突き合わせると現実的な選択肢は限られる。オートラベラーは数百万円程度だが、組立函自動製函機は1,600万〜3,500万円で、補助金は上限で止まる
- 一般型の第8回は2026年10月16日17:00に締切済み。第9回は11月上旬公募開始・12月下旬申請締切の予定
- 段ボール・フィルムなどの消耗品は対象外。機械の設置工事・基礎工事も対象外
- 出荷件数が少ないうちは、発送代行のほうが安く済むことが多い
※2026年10月26日時点。中小企業省力化投資補助金の公式サイト、カタログ注文型 公募要領(令和8年10月20日改訂)、一般型 第8回 公募要領、製品カテゴリ一覧(令和8年10月8日)をもとに作成しています。補助上限・補助率・要件は改定されることがあるため、申請前に公式サイトで確認してください。
省力化投資補助金の2つの型
この補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つがあり、投資の性格で選び分けます。
カタログ注文型
- 補助対象:カタログに登録された省力化製品(汎用製品)
- 補助上限:従業員数5人以下 500万円、6〜20人以下 750万円、21人以上 1,000万円(大幅な賃上げを達成した場合はそれぞれ750万円・1,000万円・1,500万円)
- 補助率:1/2以下
- 受付:随時。2026年3月19日の制度改定で申請受付期間が2027年3月末頃までに延長された
- 申請:製品を扱う販売事業者と共同で申請する
一般型
- 補助対象:個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築
- 補助上限:従業員数5人以下 750万円、6〜20人 1,500万円、21〜50人 3,000万円、51〜100人 5,000万円、101人以上 8,000万円(大幅賃上げの特例でそれぞれ250万円・500万円・1,000万円・1,500万円・2,000万円の引き上げ)
- 補助率:中小企業は1/2、小規模企業者・小規模事業者は2/3(最低賃金引き上げに係る特例で中小企業も2/3)
- 受付:公募回制。第8回は2026年10月16日(金)17:00に締切済みで、採択発表は2027年2月上旬(予定)
- 事業実施期間:交付決定日から17か月以内(採択発表日から19か月以内)
小売業の場合、常勤従業員数が5人以下なら小規模事業者に当たるため、一般型では補助率が2/3になります。ただし採択後から補助事業終了までの間に5人を超えると、補助率は1/2へ計画変更となります。
一般型の第9回はいつか
公式のスケジュールでは、第9回は2026年11月上旬に公募開始(予定)、12月上旬に申請受付開始(予定)、12月下旬に申請締切(予定)で、採択発表日は後日お知らせとなっています。公募回は年3〜4回を予定しており、第10回は詳細が確定次第更新されると書かれています。
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、公式サイトも「ID取得には一定の期間を要します」と早めの取得を促しています。取り方はGビズIDプライムの取り方にまとめています。
出荷・梱包で実在する製品カテゴリと、その登録数
カタログ注文型で申請できるのは、製品カテゴリに登録された製品だけです。そこで、公式の製品カテゴリ一覧(令和8年10月8日時点)から、出荷・梱包に関係するカテゴリを拾いました。カッコ内は登録製品数と対象業種です。
小売業が対象業種に入っているもの(ネットショップで選べる)
- 段ボール箱製函機:3件(製造業・倉庫業・卸売業・小売業/加工・生産、出荷)
- 組立函自動製函機:6件(同上)
- 段ボール製箱機:11件(製造業・小売業・卸売業・倉庫業/加工・生産)
- オートラベラー:28件(製造業・倉庫業・卸売業・小売業/加工・生産、梱包・加工、保管・在庫管理)
- 検品・仕分システム:6件(製造業・倉庫業・卸売業・小売業)
- ピッキングカートシステム:7件、デジタルピッキングシステム:8件
- 自動倉庫:19件、ラックシステム(垂直回転・移動・流動):合計14件
- シュリンクフィルム収縮装置:1件、食品自動袋とじ装置:2件
- RFIDによる一括読み取りシステム:8件、仕分検印機能付きシートリーダー:8件
小売業が対象業種に入っていないもの(ネットショップでは選べない)
- パレタイズロボット:47件あるが対象業種は製造業・倉庫業・卸売業
- 無人フォークリフト(AGF):製造業・建設業・倉庫業・卸売業
- パレットストレッチフィルム包装機:製造業・運輸業・倉庫業・卸売業
- バラ積みピッキングロボットシステム:製造業のみ
「封函機」という製品カテゴリはない
解説記事では「封函機(テープ貼り機)」という呼び方をよく見かけますが、製品カテゴリ一覧にこの名前のカテゴリはありません。探すべきカテゴリ名は「段ボール箱製函機」です。カテゴリの定義には「折りたたまれた状態の段ボール箱をフラップ開口して、底面に自動で粘着テープ貼りまでの作業を自動化した機械」と書かれており、箱を組んでテープを貼る工程がこのカテゴリに含まれています。
しかも同じ説明の「主に利用が想定される中小企業」には、「EC対応の出荷が増加している小売業者」が名指しで入っています。活用事例のほうにも「店舗やネット通販を展開している小売業では、段ボール箱の製函作業がボトルネックになりやすい」とあります。ネットショップの出荷作業が想定されていること自体は、公式資料で確認できます。
カテゴリがあっても製品が0件のことがある
製品カテゴリ一覧には、登録製品数が0件のカテゴリが混ざっています。出荷・梱包の周辺では「段ボール箱糊付け機」「感熱フィルム向けラベルレス印字装置」「パレットストレッチフィルム包装機」「包装フィルム・包装容器用UVレーザプリンタ」がいずれも0件です。
カテゴリ名を見て「対象になりそうだ」と判断するのは早いということです。カテゴリの存在と、そこに実際の製品が登録されているかは別の話なので、必ず製品カタログ側で件数を確認してください。
価格の目安と補助上限を突き合わせる
ここが実務上いちばん大事なところです。製品カテゴリ一覧には、カテゴリごとに価格と導入費用の目安が書かれています。
- オートラベラー:数百万円程度で導入可能。導入後の設定を行えばすぐに使用可能
- 検品・仕分システム:製品の規模により大きく異なるが、数百万円から1,000万円程度
- 段ボール箱製函機:500万円〜1,000万円(安全カバー・サイズ変更・センサー追加等で変動)
- 段ボール製箱機:1,600万円程度から。導入にあたり機械の設置工事等が必要
- 組立函自動製函機:1,600万円〜3,500万円
従業員5人以下の事業者の補助上限は500万円で、補助率は1/2以下です。つまり補助金が上限に届くのは、製品価格が1,000万円に達したところ。そこから先は価格が上がっても補助金は増えません。
この2つを並べると、見え方が変わります。
- オートラベラーに300万円:補助金150万円、自己負担150万円。小さいショップでも検討できる水準
- 段ボール箱製函機に600万円:補助金300万円、自己負担300万円。出荷件数がよほど多くないと回収できない
- 組立函自動製函機に2,000万円:補助金は上限の500万円で止まり、自己負担は1,500万円
つまりひとりや数人で回しているネットショップにとって、現実的な候補はオートラベラーやラベル貼り・検品まわりの比較的小さい投資に絞られます。製函機のような大物は、補助金があっても自己負担が数百万円単位で残ります。
単価50万円以上でないと対象にならない
カタログ注文型の公募要領は、「補助対象経費のうち購入に係る製品本体価格については、一部カテゴリの製品を除き単価50万円以上でなくてはならない」としています。一般型でも「必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要」です。数万円の小物を並べて申請する形は想定されていません。
設置工事と消耗品は対象外
一般型の対象外経費には「設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用」が明記されています。段ボール製箱機のように「導入にあたり機械の設置工事等が必要」な製品では、工事費は自己負担で別に積むことになります。
そのほか、一般型で対象外になるもののうちネットショップが引っかかりやすいのは次のあたりです。
- 消耗品:文房具などの事務用品等の消耗品代。段ボール・テープ・フィルムもここに当たる
- 汎用性があり目的外使用になり得るもの:事務用のパソコン・プリンタ・スマートフォン・タブレット端末・カメラ・家具(本事業でのみ使用が可能なものを除く)
- 既存システムのバージョンアップ・アップデート費用・改修費用(新規に導入するシステムと連携するための改修費用は対象)
- 中古品購入費/不動産の取得費用(簡易建物も対象外)/家賃・光熱水費/振込等手数料(代引手数料を含む)/消費税
カタログ注文型でも中古品と交付決定前に購入した省力化製品は対象外で、公募要領は「いかなる理由であっても事前着手は認められません」と書いています。発注のタイミングは補助金でECサイトを作るときの発注タイミングと同じ考え方で、交付決定を待つのが絶対条件です。
一般型はクレジットカード払いが使えない
見落としやすい差です。一般型の公募要領は「支払いは、銀行振込の実績で確認を行います(現金払や手形払等で実績を確認できないものは対象外)」とした上で、「銀行振り込みが可能にもかかわらず事業者の支払いのしやすさ等を理由にクレジットカードを利用すること、及び支払い方法に限らず代行振込は一切不可」としています。
持続化補助金は条件付きでクレジットカード払いを認めていますが、省力化の一般型は原則として使えません。補助金ごとに支払方法のルールが違うので、同じつもりで進めないことです。
なお一般型では、契約先または発注先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜)以上の物件は、同一条件による相見積もりを取得して最低価格を提示した者を選ぶのが原則です。相見積の実務は持続化補助金の相見積をECサイトで取るときの実務でも扱っていますが、金額の線引きが補助金ごとに違う点に注意してください。
申請には「人手不足の状態にある」ことの説明が要る
この補助金は「作業を楽にしたい」だけでは要件を満たしません。カタログ注文型の公募要領は、人手不足の状態にあることを次の4つから1つ選んで示すよう求めています。
- ①限られた人手で業務を遂行するため、直近の従業員の平均残業時間が30時間を超えている
- ②整理解雇に依らない離職・退職によって従業員が前年度比で5%以上減少している
- ③採用活動を行い求人掲載したものの、充足には至らなかった
- ④その他、省力化を推し進める必要に迫られている
注意したいのは④を選んだ場合の扱いです。公募要領は、④は例外的な扱いとなり「省力化投資の必要性をより厳格(場合によっては追加書類の提示を求める等)に審査するために採択結果の通知が大幅に遅れる可能性がある」と明記しています。①〜③のどれかで説明できる形に整えてから申請するほうが有利です。
採択後も3年間の目標が付いてくる
カタログ注文型では、補助事業終了後3年間、毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を作り、採択されたらそれに取り組まなければなりません。労働生産性は「(営業利益+人件費+減価償却費)÷従業員数」で定義されています。
補助上限の引き上げを使う場合は、さらに事業場内最低賃金を3.0%以上、給与支給総額を6.0%以上増加させることが条件で、申請時に賃金引き上げ計画を従業員に表明していることが必要です。達成できなければ補助額が減額されます(一般型では引き上げ分の返還を求められます)。
2回目以降の交付申請には追加の要件もあります。累計補助上限額は「各申請時点の補助上限額×2」で、前回までの累計交付額を差し引いた額が上限になります。さらに前回の交付申請時と比較して事業場内最低賃金を3.5%以上(2年以上経過なら7.0%以上、3年以上なら10.5%以上)上昇させている必要があります。
ネットショップでの現実的な判断の順番
機械を入れると作業は減りますが、設置スペース、電源、保守の手間も増えます。次の順で考えると判断を誤りにくくなります。
- 1. 時間を測る:梱包・出荷に毎日どれだけ時間がかかっているか、人件費に換算するといくらか
- 2. 箱の種類を数える:箱のサイズがそろっていないと、製函機やラベラーの効果が出にくい
- 3. 自己負担を出す:製品価格 −(製品価格 × 1/2、上限は従業員数別)。工事費と消耗品は全額自己負担
- 4. 外注と比べる:同じ金額を発送代行に払ったら何件さばけるか
- 5. 画面の作業と分ける:送り状発行や在庫更新のような画面上の作業は、機械ではなくソフトで減らせる
発送代行と比べる
出荷件数が少ない、または波が大きい場合は、機械を買うより発送代行に任せたほうが安く済むことが多いです。判断の基準はネットショップの発送を外注すべきかで、自分の時給から計算する方法を紹介しています。
ソフトウェアで減らせる作業もある
送り状の発行や在庫数の更新など、画面上の作業は一元管理ツールで減らせることがあります。こちらはデジタル化・AI導入補助金の対象になる可能性があります。ツールの選び方とプロセス要件はデジタル化・AI導入補助金でECの受注・在庫・決済ツールを入れるを参考にしてください。
カタログ注文型の申請の流れ
- GビズIDプライムを取得する(取り方はこちら)
- 製品カタログで、導入したいカテゴリと製品を探す。対象業種に小売業が入っているか、登録件数が0件でないかを確認する
- 価格の目安から自己負担額を計算し、発送代行と比べる
- 人手不足の状態にあることを①〜③のどれで説明するか決める
- その製品を扱う販売事業者に相談し、共同で申請する
- 交付決定を受けてから発注・導入する
- 実績報告を行い、以後3回の効果報告で労働生産性と賃上げの実績を報告する
まとめ
- 出荷・梱包の機械はカタログに実在する。ただし探すべき名前は「封函機」ではなく「段ボール箱製函機」「オートラベラー」「検品・仕分システム」
- 対象業種に小売業が入っていないカテゴリがある。パレタイズロボットは47件あってもネットショップでは選べない
- 登録0件のカテゴリもある。カテゴリ名ではなく製品件数を見る
- 5人以下の補助上限は500万円・補助率1/2以下。オートラベラー級なら現実的だが、製函機級は自己負担が数百万〜千数百万円残る
- 消耗品・設置工事・中古品・交付決定前の発注は対象外。一般型はクレジットカード払いも不可
- 一般型の第8回は締切済み。第9回は11月上旬公募開始・12月下旬締切の予定
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参考資料
最終確認日:2026年10月26日


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