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補助金でECサイトを作るときの発注タイミング|交付決定前に発注すると全額自己負担になる

補助金
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補助金でECサイトを作るとき、最も金額の損失が大きい失敗は、採択の連絡が来た時点で制作会社に発注してしまうことです。交付決定の通知を受け取る前に発注した経費は、1円も補助されません。これは例外的な事故ではなく、公募要領に最初からそう書かれています。

この記事では、交付決定前の発注がどう扱われるのか、申請締切から公開までをどう逆算すればいいのか、そしてウェブサイト関連費にかかっている上限を、公募要領の記載にもとづいて整理します。

この記事の結論

  • 補助金でECサイトを作るとき、交付決定の通知を受け取る前に発注・契約した分は1円も補助されない。小規模事業者持続化補助金は「補助金交付決定通知書」の受領前は補助対象となる経費支出等はできないと定め、デジタル化・AI導入補助金は「交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない」と明記している。
  • 申請の締切と交付決定日のあいだには1か月以上の空白がある。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠6次は締切が2026年10月30日(金)17:00、交付決定日が2026年12月10日(木)(予定)。締切に間に合わせても、約6週間は制作に着手できない。
  • 持続化補助金のウェブサイト関連費は補助金の申請額が30万円(税込)で天井。補助率2/3なので、ウェブ関連の経費を45万円かけた時点で上限に届き、それ以上かけても補助金は増えない。しかもウェブサイト関連費のみでの申請はできない。
  • 1件あたりの発注総額が50万円超(税込)なら2者以上の見積が必要。見積を取る行為は発注ではないので、交付決定を待つ間に進めておける。
  • 公開に至らなかったサイトは対象外。「作った」ではなく「補助事業期間内に運用に至った」ことが条件。

※2026年10月5日時点。「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」および「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領」をもとに作成しています。申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。

交付決定前の発注は、なぜ1円も補助されないのか

小規模事業者持続化補助金の公募要領は、補助対象経費の要件として次の3つを挙げています。

  • ①使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
  • ②交付決定日以降に発生し補助事業期間中に支払が完了した経費
  • ③証憑資料等によって支払金額が確認できる経費

そして「『補助金交付決定通知書』の受領前は、補助対象となる経費支出等はできません」と明記されています。デジタル化・AI導入補助金の通常枠公募要領も同じで、「交付決定前にITツールを契約、発注した場合は補助対象とならない」としています。

ここで押さえておくべきなのは、「採択」と「交付決定」は別の手続きだという点です。採択は「この事業計画を補助の対象として選んだ」という選定、交付決定はそのあとに経費の内容を審査して「この金額を交付する」と決める行為です。採択通知が来てから交付決定通知が届くまでにはさらに手続きがあり、発注してよいのは後者を受け取ってからです。採択の連絡で動き出すと早すぎます。

制度の全体像は小規模事業者持続化補助金でECサイトは作れるかで整理しています。

スケジュールを逆算する

「交付決定まで待つ」と決めたら、次に必要なのは逆算です。公表されている日程から、実際にいつ発注できていつまでに公開しなければならないかを置いてみます。

デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(6次締切分)

申請締切 2026年10月30日(金)17:00
交付決定日 2026年12月10日(木)(予定)
事業実施期間 交付決定〜2027年5月31日(月)17:00(予定)
事業実績報告期限 2027年5月31日(月)17:00(予定)

締切の10月30日から交付決定の12月10日まで約6週間。この間は契約も発注もできません。そして発注できるようになってから実績報告期限まではおよそ5か月半です。導入・運用・報告までをこの期間に収める必要があるので、制作に使える実質的な時間は5か月より短くなります。なお締切時間については「締切時間を過ぎた場合は、いかなる理由であっても受付対応は一切いたしかねます」と明記されています。

この補助金はECサイトの制作費そのものではなく、受注・在庫・会計・決済といった業務のITツール導入を対象とする制度です。何が対象になり何がならないかはデジタル化・AI導入補助金はECサイトに使えるのかにまとめています。補助額は5万円〜450万円、補助率は1/2以内(一定条件下では2/3以内)。サブスクリプション形式のソフトウェア利用料とクラウド利用料は最大2年分が対象で、ハードウェア購入費は通常枠では対象外です。

小規模事業者持続化補助金 第20回公募

事業支援計画書(様式4)発行受付締切 2026年12月4日(金)
申請受付 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00
補助事業実施期限 交付決定日より2028年3月31日(金)まで
見積書等提出期限 2028年2月29日(火)
実績報告提出期限 2028年4月10日(月)

注目すべきは最初の行です。様式4の発行受付締切は申請締切より11日早い。商工会議所・商工会に出向いて発行してもらう書類なので、申請締切の12月15日を目標に動くと間に合いません。実務上の締切は12月4日です。

交付決定日は公表されていません。公募要領は実施期限を「交付決定日より2028年3月31日(金)まで」と書く形式なので、発注解禁の日は採択後に個別に通知される日付で決まります。2028年3月31日という末尾の日付だけを見て「まだ1年以上ある」と考えるのは逆算の順番が違います。起点が動く以上、押さえるべきは末尾ではなく起点です。

ウェブサイト関連費の30万円という天井

持続化補助金でECサイトを作る場合、もう一つ先に知っておくべき制約があります。公募要領は、ウェブサイト関連費について「当経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)です」と定めています。経費の上限ではなく、補助金の上限が30万円です。

通常枠の補助率は2/3なので、逆算するとこうなります。

  • ウェブ関連の経費 30万円 → 補助金 20万円
  • ウェブ関連の経費 45万円 → 補助金 30万円(ここで上限に到達)
  • ウェブ関連の経費 60万円 → 補助金 30万円(増えない。自己負担は30万円)
  • ウェブ関連の経費 100万円 → 補助金 30万円(自己負担は70万円)

つまり45万円を超えた分は全額が自己負担です。100万円のECサイトを作っても戻ってくるのは30万円で、補助率2/3という数字から受ける印象とはかなり違います。通常枠の補助上限は50万円(インボイス特例で50万円、賃金引上げ特例で150万円の上乗せ、両方に該当する場合は200万円の上乗せ。赤字事業者は賃金引上げ特例で補助率3/4)ですが、そのうちウェブサイト関連費に充てられるのは30万円までという内側の制限がかかります。

さらに「ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください」という条件があります。「ECサイトを作りたいので持続化補助金を使う」という組み立て方は、そもそも申請として成立しません。販路開拓の事業全体を設計し、そのなかの一部としてサイトを位置づける必要があります。事業計画の書き方は持続化補助金の事業計画書をECで書くときの考え方で扱っています。

対象になる経費の例としては、商品販売のためのウェブサイト作成や更新、掲載する商品・サービスを販売するための画像や動画の作成費用、販路開拓等のための特定業務用ソフトウェア、顧客管理システムの構築などが挙げられています。一方で、ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング・アドバイス費用、家庭および一般事務用ソフトウェア、既に導入しているソフトウェアの更新料は対象外です。制作費は対象でも、その前段の相談料は対象外という線引きになっています。

50万円超の発注には2者以上の見積が必要

持続化補助金の公募要領は、「発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)を要するものについては、2者以上から見積を取」ることを求めています。中古品については金額に関わらず、すべて2者以上からの見積が必須です。

ECサイトの制作を外部に頼むと50万円を超えることは珍しくないので、多くの場合これに該当します。ここで効いてくるのが、見積を取る行為は発注ではないという点です。契約も発注もしていないのだから、交付決定を待つ必要はありません。交付決定までの空白期間にできることと、できないことを分けておきます。

交付決定前にやっていいこと 交付決定後でなければできないこと
制作会社に相談し、見積(2者以上)を取る 発注・契約(内示や口約束も避ける)
要件を整理し、サイト構成や商品点数を決める 着手金・前払金の支払い
商品写真や原稿を自分で準備する 制作会社による作業の開始
開業届・特定商取引法の表記など、補助金と無関係な準備 有料プランの契約開始

見積と要件定義を先に終わらせておけば、交付決定の通知が届いた日に発注できます。デジタル化・AI導入補助金6次のように発注解禁から実績報告まで5か月半しかない場合、この準備の差が間に合うかどうかを決めます。

「作った」だけでは対象外になる

最後にもう一つ。持続化補助金の公募要領は対象外となるものとして「補助事業期間内に運用に至らなかったホームページ・ランディングページ」を挙げています。

補助事業期間内に公開して運用していることが条件で、制作が終わっているだけでは足りません。期限ぎりぎりに発注して「開発は完了したが公開は翌月」という状態になると、支払いを終えていても対象外と判断される余地があります。実績報告の期限から逆算して、公開日を期限の内側に置いたスケジュールを組んでください。見積書等の提出期限(第20回は2028年2月29日)が実施期限(2028年3月31日)より1か月早い点も、事務手続きが最後に残ることを見込んだ設計です。

待てないときはどう判断するか

ここまでの日程を見て、「交付決定まで待っていたら商機を逃す」と感じたなら、それは正しい感覚です。デジタル化・AI導入補助金6次で申請したなら着手は12月中旬以降、持続化補助金 第20回なら交付決定の通知を待ってからになります。年末商戦に出したい、思いついた商品をすぐ売りたいという状況では、補助金のスケジュールは合いません。

その場合の選択肢は2つあります。1つは、補助金を待たずに月額の安いカートで小さく始め、売れることを確認してから次の公募で本格的なサイトに投資する方法。もう1つは、補助金の対象を制作費ではなく運用側のツールに寄せて、サイト自体は自力で立てる方法です。前者を選ぶなら、まず月額と手数料の実額を比べるところからです。ネットショップ作成サービスの比較で、無料から始められるものを含めて整理しています。

どちらにしても、補助金のスケジュールに事業を合わせるのではなく、事業のスケジュールに合う補助金を選ぶという順番で考えるほうが失敗しません。

ECサイト制作・補助金の活用を相談したい方へ

「自分の場合はどの補助金とどう組み合わせればいいか」「交付決定を待つ前提でどんなスケジュールを組むべきか」といったご相談を承っています。申請書類の作成が必要な場合は、行政書士をご紹介します。

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