補助金の記事はどれも「対象経費」までは教えてくれますが、事業計画に何を書けば通るのかはぼんやりしたままです。第20回は、申請件数16,576件に対して採択7,819件だった第19回と同じくらいの競争率になると考えるのが自然です。半分は落ちます。
先に結論
- 第20回の公募要領は、補助事業計画に「定量的な成果(売上高・売上総利益の増加)」を書くことを求めている
- ネットショップは、ここが実店舗より書きやすい。売上を「セッション × CVR × 客単価」に分解でき、どの数字をいくら動かすかを根拠つきで書けるから
- 逆に、分解せずに「売上が20%伸びます」と書くと、根拠のない願望として読まれる
- ウェブサイト関連費は補助金額で30万円が上限、かつ単独では申請できない。計画はこの制約から逆算して組む
※2026年9月23日時点の情報です。公募要領は改版されることがあるため、申請前に必ず公式サイトで最新版を確認してください。
第20回の基本情報
| 申請受付 | 2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00 |
|---|---|
| 事業支援計画書(様式4)の発行依頼 | 2026年12月4日(金)まで |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4) |
| 補助上限 | 50万円/インボイス特例で100万円/賃金引上げ特例で200万円/両方で250万円 |
| 対象者 | 小規模事業者(商業・サービス業は常時使用する従業員5人以下) |
| 補助事業の実施期限 | 2028年3月31日(金) |
| 実績報告書の提出期限 | 2028年4月10日(月) |
採択率は約5割
| 回 | 採択率 |
|---|---|
| 第17回 | 51.05% |
| 第18回 | 47.52% |
| 第19回 | 47.17%(申請16,576件・採択7,819件) |
宝くじではありませんが、出せば通るものでもありません。落ちる半分との差がつくのは、計画の中身です。
対象経費そのものの整理は持続化補助金(第20回)でネットショップは作れるかにまとめています。この記事は、その先の「計画をどう書くか」の話です。
ネットショップが有利な理由
第20回の公募要領は、補助事業計画に定量的な成果(売上高・売上総利益の増加)を記載することを求めています。つまり「がんばります」では足りず、いくら増えるのか、なぜそう言えるのかを書けということです。
ここでネットショップは有利です。実店舗の「来店客が増えます」は測りにくい。一方ネットショップの売上は、必ずこう分解できます。
売上 = セッション数 × CVR(購入率) × 客単価
この3つのどれを、何によって、いくら動かすのか。これを書けば、それがそのまま定量的な成果の根拠になります。しかも3つとも、アクセス解析とカートの管理画面に実績値があります。他人の相場ではなく、自分の店の実績から積み上げられるのが強みです。
計算例:月商50万円のショップが何を書くか
実際に数字を置いてみます。仮の数字ですが、計算過程は全部出します。自分の店の数字に入れ替えてください。
現状(直近12ヶ月の実績)
| 年間セッション | 60,000 |
|---|---|
| CVR | 1.2% |
| 客単価 | 8,300円 |
| 年商 | 60,000 × 1.2% × 8,300 = 5,976,000円(年間720件) |
| 粗利率 | 40% → 粗利 2,390,400円 |
補助事業の中身
| 経費区分 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| ウェブサイト関連費 | 300,000円 | 主力商品20点のページ改修(比較表・サイズ表・レビュー掲載) |
| 広報費 | 300,000円 | リスティング広告 |
| 合計 | 600,000円 | 補助金 600,000 × 2/3 = 400,000円(自己負担200,000円) |
効果の見積もり
ここが本番です。1行ごとに根拠を付けます。
- セッション:60,000 → 66,000(+6,000)
根拠:広告費300,000円 ÷ 想定クリック単価50円 = 6,000クリック。クリック単価は同カテゴリの実績値を使う - CVR:1.2% → 1.35%(+0.15pt)
根拠:先行して改修済みの商品ページ群のCVRが実績で1.35%だった。同じ改修を20点に広げる - 客単価:8,300円 → 据え置き
根拠:今回の施策は客単価に働きかけないため、動かさない
3つ全部を都合よく伸ばさないこと。施策と関係のない数字まで上振れさせた計画は、読む側にすぐ分かります。動かさない理由を書くほうが、計画全体の信頼が上がります。
結果
改善後の年商 = 66,000 × 1.35% × 8,300 = 7,395,300円
売上増 7,395,300 − 5,976,000 = 1,419,300円(+23.7%・年間171件増)
粗利増 1,419,300 × 40% = 567,720円
自己負担200,000円に対して、粗利の増加は初年度で約568,000円。補助金がなくても回収できる計画になっているかは、申請する前に自分で確かめておく価値があります。ここが合わない施策は、そもそも補助金を取ってもやるべきではありません。
ウェブサイト関連費の制約から逆算する
ネットショップの申請で必ず効いてくるルールが2つあります。
- ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の上限が30万円(税込)。補助率2/3なので、経費に直すと45万円までが実質の枠
- ウェブサイト関連費だけでは申請できない。必ずほかの経費区分と組み合わせる
つまり「サイト制作費100万円を2/3もらう」という使い方はできません。サイトは30万円の枠に収め、残りを別の区分で組むのが現実的な形です。組み合わせの候補は次のとおりです。
| 組み合わせる区分 | ネットショップでの中身 |
|---|---|
| 広報費 | リスティング・SNS広告、チラシ、同梱物 |
| 新商品開発費 | ECで売る新商品の試作・デザイン |
| 機械装置等費 | 撮影・梱包・検品まわりの設備 |
| 展示会等出展費 | リアルの販路を足す場合 |
| 委託・外注費 | 撮影、ライティングなどの外注 |
なお1件あたり50万円(税込)を超える発注は2者以上の見積が必要です。制作会社に声をかける段階で、補助金を使う予定だと伝えておくと後で慌てずに済みます。
経営計画の4項目をECでどう埋めるか
経営計画は「企業概要」「顧客ニーズと市場の動向」「自社の強み」「経営方針・目標」の4つで構成されます。ネットショップの場合、それぞれに入れるべき中身は次のように考えると迷いません。
| 項目 | ネットショップで書く中身 |
|---|---|
| 1. 企業概要 | 開業時期、取扱カテゴリ、販売チャネル(自社EC・モール)、直近の売上構成。チャネル別の比率まで書く |
| 2. 顧客ニーズと市場の動向 | 検索キーワードと流入の実績、レビューに繰り返し出てくる言葉。一般論の市場規模より、自分の店に届いている声のほうが強い |
| 3. 自社の強み | リピート率、レビュー評価、同梱物の工夫など数字か具体物で示せるもの。「丁寧な対応」は強みとして読まれない |
| 4. 経営方針・目標 | 上の分解式で置いた3つの数字を、そのまま目標として書く |
補助事業計画のほうは「事業名(30文字以内)」「販路開拓等の取組内容」「業務効率化の取組(任意)」「補助事業の効果」です。効果の欄に、計算過程ごと数字を入れます。
業務効率化の取組は任意ですが、受注・発送まわりに手を入れる予定があるなら書いておくと計画に厚みが出ます。何を効率化すべきかの判断はEC受注業務が回らなくなる境界線、外注の損益分岐は発送を外注すべきかで整理しています。
EC事業者がつまずきやすい3点
1. 交付決定前にサイトを作ってしまう
発注・契約・支払いができるのは交付決定日以降です。第20回は採択発表が2027年3月ごろの見込みなので、申請から実際に着手できるまで3ヶ月以上あきます。年末商戦に間に合わせたいという理由で先に作ると、その費用は対象外になります。
「補助金を待つか、待たずに始めるか」は先に決めておくべきです。待たない判断をするなら、月額制のカートで小さく始めて、補助金は別の投資に充てるほうが早い。カートごとの費用構造はネットショップ作成サービス6社を「料金構造」で比較で計算しています。
2. 後払いを資金繰りに入れていない
補助金が入るのは、事業が終わって実績報告が通ったあとです。60万円の経費は、いったん全額自分で払います。仕入れの多い時期と重なると効きます。
3. 現状の数字を持っていない
分解式で書こうにも、セッションもCVRも分からないと始まりません。アクセス解析を入れていないなら、申請準備より先にそれです。直近3ヶ月の実績があるだけで、計画の説得力は変わります。
まとめ
- 第20回は補助事業計画に定量的な成果(売上高・売上総利益の増加)を求めている
- ネットショップは売上=セッション × CVR × 客単価に分解できるので、ここを書きやすい
- 動かす数字と動かさない数字を分けて、1行ずつ根拠を付ける。3つ全部を伸ばす計画は信用されない
- ウェブサイト関連費は補助金額で30万円が上限・単独申請不可。この制約から逆算して組む
- 採択率は約47%。落ちる半分との差は計画の中身で付く
- 着手できるのは交付決定後。申請から3ヶ月以上あくことを前提に計画する
- 申請締切は2026年12月15日17:00、様式4の発行依頼は12月4日まで
補助金の計画書は、事業計画を他人に説明する練習でもあります。通らなくても、自分の店の数字を分解して書いた経験は残ります。
参考資料
- 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>(第20回)」の公募要領を公開しました
- 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>」第19回公募の採択事業者を決定しました
- 小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>(商工会議所地区)
- 小規模事業者持続化補助金【一般型・通常枠】(商工会地区)
- ミラサポplus「小規模事業者持続化補助金『経営計画・補助事業計画』の書き方」


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