※ 各サービスの料金は2026年9月時点で公式サイトを確認したものです。最新の情報は各社の公式ページをご確認ください。
ネットショップを始めようと調べていると、「初期費用0円」「無料で開設できる」という言葉によく出会います。それ自体は嘘ではありません。実際、今日この瞬間からお金をかけずにショップを開くことはできます。
ただ、実際に運営を始めると、開業前の見積もりに入っていなかった支出がいくつも出てきます。私自身、複数のブランドで自社ECとモール店舗の運営に関わってきましたが、最初につまずくのは「かかると思っていなかった費用」のほうでした。
この記事では、ネットショップ開業にかかる費用を初期・月額に分けて全部並べます。そのうえで、見積もりから抜け落ちやすい費用と、売上が伸びたときに何が変わるのかまで書きます。
結論:最低限いくらから始められるか
先に金額だけ示します。
| 最小構成 | きちんと始める構成 | |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0円 | 3〜5万円 |
| 月額固定費 | 0円 | 4,000〜8,000円 |
| 売上に応じた費用 | 決済手数料 3〜6.6% | 決済手数料 3〜4% |
最小構成というのは、無料のカートサービスを使い、独自ドメインを取らず、商品写真もスマートフォンで自分が撮り、梱包資材も手持ちのもので済ませる、という形です。これでも売ることはできます。
「きちんと始める構成」は、独自ドメインを取り、有料プランで手数料を下げ、梱包資材を揃え、必要なら撮影を外注する形です。
どちらが正解ということはありません。扱う商品と、どれくらいの期間で結果を見たいかで決まります。判断の材料になるよう、内訳を分解していきます。
費用の全体像
ネットショップの費用は、性質の違う3つに分かれます。ここを混ぜて考えると、見積もりがずれます。
- 初期費用 — 開業時に一度だけかかるもの
- 月額固定費 — 売れても売れなくても毎月かかるもの
- 変動費 — 売れた分だけかかるもの
このうち、開業前の見積もりで漏れやすいのは3つ目です。理由は単純で、売れるまで実感が湧かないからです。
初期費用の内訳
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| ショップ開設費 | 0〜3,300円 | STORES・BASE・Shopifyは0円。カラーミーショップは有料プランで3,300円 |
| 独自ドメイン | 年1,000〜4,000円 | .comなら年2,000円前後 |
| 商品撮影 | 0〜3,000円/点 | 自分で撮れば0円。外注は1点1,000〜3,000円 |
| 撮影用の備品 | 0〜15,000円 | 背景紙、ライト、三脚 |
| 梱包資材の初回購入 | 5,000〜20,000円 | 箱、緩衝材、テープ、送り状 |
| 商品の仕入れ | 商材による | 最も幅が大きい |
| ロゴ・ショップデザイン | 0〜30,000円 | 無料テンプレートで始めても問題ない |
商品の仕入れを除けば、1〜4万円あれば形になります。
ここで一つ、実務的な話をします。初期費用で最も削りやすいのはデザインです。開業前は「見た目を整えないと売れない」と思いがちですが、実際に売上を左右するのは商品写真の質であって、テンプレートの選択ではありません。デザインに3万円かけるなら、撮影に3万円かけたほうが返ってきます。
月額固定費の内訳
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| カートサービスの利用料 | 0〜4,950円 |
| 独自ドメイン更新料 | 月あたり100〜350円 |
| 有料の追加機能・アプリ | 0〜数千円 |
月額固定費は、実質カートサービスの利用料でほぼ決まります。
変動費の内訳
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 決済手数料 | 売上の2.9〜6.6%(+1件あたり30〜40円のことも) |
| 送料 | 1件300〜1,000円 |
| 梱包資材 | 1件50〜200円 |
| 販売手数料 | サービスにより0〜3% |
| 振込手数料 | 1回200〜500円程度 |
変動費こそが、長期的には最大の支出です。月商が10万円を超えたあたりから、月額固定費より決済手数料のほうが大きくなります。
カート費用の考え方
主要なネットショップ作成サービスの費用構造を並べます。金額は2026年9月時点のものです。
| サービス | 初期費用 | 月額 | 決済手数料 | 販売手数料 |
|---|---|---|---|---|
| STORES(フリー) | 0円 | 0円 | 5.5%〜 | 0円 |
| STORES(スタンダード) | 0円 | 3,300円 | 3.6%〜 | 0円 |
| BASE(スタンダード) | 0円 | 0円 | 3.6%+40円 | 3% |
| BASE(グロース) | 0円 | 16,580円 | 2.9% | 0円 |
| カラーミーショップ(レギュラー) | 3,300円 | 4,950円 | 3.4%〜 | 0円 |
| Shopify(ベーシック) | 0円 | 3,650円 | 3.55% | — |
※ 月額はいずれも年間契約(年払い)の場合です。月払いにすると STORESスタンダード3,960円、BASEグロース19,980円、Shopifyベーシック4,850円に上がります。
※ 決済手数料は決済方法によって変わります。STORESはPayPay残高・Amazon Pay・あと払い等でフリー6.5%/スタンダード4.6%、BASEはPayPay・Amazon Pay・PayPalで+1%、カラーミーは後払い4.0%〜・PayPayや楽天ペイに月額2,200円が別途かかります。表示されている料率は最も安い決済方法のものです。
このうちカラーミーショップは、初期費用3,300円がかかる代わりに決済手数料が3.4%〜と表中では低い部類です。会員登録そのものは無料なので、料金表だけで決めきれないときは管理画面を先に触って比べてみてください。→ カラーミーショップの無料会員登録
この表を見て気づいてほしいのは、無料プランは「無料」ではないということです。月額がゼロなだけで、その分は決済手数料に乗っています。
無料プランと有料プランはどこで逆転するか
具体的に計算します。STORESを例に取ります。
- フリープラン:月額0円+決済手数料5.5%
- スタンダードプラン:月額3,300円(年間契約)+決済手数料3.6%
手数料の差は1.9%です。月額3,300円をこの差で割ると、
3,300円 ÷ 0.019 = 約173,700円月商が約17.4万円を超えたら、スタンダードプランのほうが安くなります。
月商別に見るとこうなります。
| 月商 | フリープラン | スタンダードプラン | 有利なほう |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 2,750円 | 5,100円 | フリー |
| 10万円 | 5,500円 | 6,900円 | フリー |
| 15万円 | 8,250円 | 8,700円 | フリー |
| 約17.4万円 | 9,570円 | 9,564円 | ほぼ同じ |
| 30万円 | 16,500円 | 14,100円 | スタンダード |
| 50万円 | 27,500円 | 21,300円 | スタンダード |
つまり、最初はフリープランで始めて、月商17万円を超えたあたりで切り替えるのが合理的です。開業前から有料プランを契約する必要はありません。
なお、この計算はサービスごとに分岐点が違います。BASEは差が大きいぶん分岐点が高く、月商45万円前後になります。各社の料金を同じ条件で並べた計算は「ネットショップ作成サービス6社を「料金構造」で比較|月商いくらでどれが安いか」にまとめています。
見落とされがちな費用
ここからが、この記事で一番書きたかった部分です。開業前の見積もりに入っていなくて、運営を始めてから「そうだった」となる費用を並べます。
1件あたりの固定額が、低単価商品に効く
決済手数料には「3.6%+40円」のように、パーセンテージとは別に1件ごとの固定額が乗ることがあります。
これが効くのは低単価商品です。1,000円の商品を売った場合、
- 3.6% = 36円
- +固定額 40円
- 合計 76円(実質7.6%)
パーセンテージだけ見て「3.6%か、安いな」と判断すると、実際の負担は倍近くになります。客単価が低いショップほど、固定額のないサービスを選ぶべきです。
コンビニ払いや代引きは、そもそも料率ではなく固定額のことがあります(カラーミーショップならコンビニ払い165円〜、代引き396円〜)。決済手段を増やすほど購入率は上がりますが、その分だけ手数料の構造は複雑になります。
振込手数料
売上は自動で口座に入るわけではなく、振込のたびに手数料がかかります。1回200〜500円程度です。
金額としては小さいのですが、入金サイクルを短くするほど回数が増えて損をします。月1回にまとめるだけで年間数千円変わります。開業直後は資金繰りが不安で頻繁に引き出したくなりますが、ここは我慢したほうがいい部分です。
返品・交換の送料
返品を受け付ける場合、往復の送料はほぼ販売者負担になります。1件あたり600〜2,000円です。
返品率が5%だとすると、月100件売れば5件。1件1,200円なら月6,000円。有料プランの月額を上回ります。
サイズのある商品、色味が重要な商品を扱うなら、返品率は最初から費用として見込んでおいてください。
梱包資材の「合わないサイズ」
箱を商品にぴったりのサイズで選ぶと、たいてい失敗します。緩衝材の厚みが計算に入っていないからです。
目安として、商品の各面に最低2cmの余裕を見てください。上下・左右・前後すべてです。ここを見ておかないと、いざ詰める段になって緩衝材が入らず、ワンサイズ上の箱を買い直すことになります。まとめ買いした後だと、その在庫がまるごと無駄になります。
梱包資材は、商品が確定してから、少量で試してから、まとめ買いするという順番を守ってください。まとめ買いの単価は確かに安いのですが、サイズが合わなければ意味がありません。
撮影のやり直し
商品写真は一度で終わりません。
ただし、お金をかけるべき場所は限られています。カメラは要りません。最近のスマートフォンのカメラで十分です。撮り直しの原因になるのは、機材ではなく背景と照明のほうです。
自宅で撮るなら、背景(無地の布や板)と光の当て方だけは先に決めてください。ここが安定していないと、商品ごとに色味や明るさがばらついて、結局は全部撮り直しになります。逆に、細かい加工はAIの画像編集ツールで対応できるようになったので、レタッチのために高価なソフトや外注を用意する必要はありません。
外注する場合、撮り直しは追加費用になります。最初に「どんな写真が必要か」を決めてから発注してください。モールにも出すなら、モールごとの画像規定を先に確認しておくと、二度手間が減ります。
在庫の値下げ・廃棄
売れ残った在庫は、値下げして売るか、処分することになります。これは費用として計上されにくいのですが、実質的には最大の損失になり得ます。
値下げは思いつきでやらないでください。あらかじめ期間を決めておくか、セール時期に合わせる程度に留めるのが現実的です。売れないからと都度値下げをしていると、定価で買う理由がなくなります。
ただし、粘りすぎるのも危険です。型落ちになる前に売り切る——ここだけは意識しておいてください。在庫は持っているだけでは損失に見えませんが、売れる価格が下がっていく分は確実に減っています。
売上規模別のリアルな費用感
月商別に、費用の合計がどうなるかを示します。客単価5,000円、決済手数料3.6%+固定額なし、送料は購入者負担、という前提です。
| 月商10万円(20件) | 月商50万円(100件) | 月商100万円(200件) | |
|---|---|---|---|
| カート月額 | 0円(フリー) | 3,300円(スタンダード) | 3,300円(スタンダード) |
| 決済手数料 | 5,500円 | 18,000円 | 36,000円 |
| 梱包資材 | 2,000円 | 10,000円 | 20,000円 |
| 振込手数料 | 300円 | 300円 | 300円 |
| 合計 | 約7,800円 | 約31,600円 | 約59,600円 |
| 売上に対する比率 | 7.8% | 6.3% | 6.0% |
売上が伸びるほど、比率は少しずつ下がります。ただし下がり方は緩やかで、6%前後で頭打ちになります。
ここに商品原価と広告費が乗ります。仕入れ原価率が50%、広告費を売上の10%とすると、手元に残るのは売上の30%強。月商100万円で30万円強です。
「月商」と「利益」を混同しないでください。開業前の計画で最も多い誤りがこれです。
費用を抑えるために最初にやること
3つだけ挙げます。
1. 最初はフリープランで始める
前述のとおり、月商17万円前後までは無料プランのほうが安くなります。有料プランの機能が必要になるのは、その先です。
2. 撮影は自分でやってみる
スマートフォンのカメラは十分に高性能です。必要なのは、白い背景と、窓からの自然光と、三脚だけです。合わせて5,000円もかかりません。それで足りないと分かってから外注してください。
3. 開業届と青色申告承認申請書を出す
これは費用を「減らす」話です。青色申告の特別控除は最大65万円で、所得税・住民税を合わせると年20万円前後の差になります。提出自体は無料です。
青色申告承認申請書は、開業から2ヶ月以内が絶対期限です。この期限を逃すと、初年度は白色申告になり、控除を受けられません。開業届と同時に出してください。
※ 税制は変わります。詳細は国税庁のサイトを確認するか、税理士にご相談ください。
やってはいけないこと
逆に、開業前にお金をかけるべきでないものも挙げておきます。
- 有料テーマ・デザインへの投資 — 売れ始めてからで間に合います
- 大量の在庫の先行仕入れ — 何が売れるかは、売ってみるまで分かりません
- 広告出稿 — 商品ページが整う前に広告を出すと、集めたアクセスを取りこぼします
- 複数チャネルの同時展開 — 1つで回せるようになってから増やしてください
いずれも「後からできること」です。開業時に必要なのは、売れる商品と、伝わる写真と、届く仕組みだけです。
まとめ
- 最小構成なら初期費用0円、きちんと始めても3〜5万円で開業できる
- 長期的な負担は月額固定費ではなく、売上に比例する決済手数料
- 無料プランは月額がゼロなだけで、手数料が高い。月商17万円前後で有料プランと逆転する
- 見落としやすいのは、1件あたりの固定額、振込手数料、返品送料、梱包資材、撮影のやり直し、在庫の値下げ
- 売上規模が大きくなっても、費用比率は6%前後で頭打ちになる
- 開業届と青色申告承認申請書は、費用を減らす手段として最初に出す
費用の全体像が見えたら、次は具体的な手順です。開業届の提出からショップ開設、初回発送までの流れは別記事にまとめています。
あわせて読む:個人がネットショップを始める手順|開業届から初回発送までの全工程
この記事について
筆者はWebマーケティング・EC運営のフリーランスとして、複数のブランドで自社ECおよびモール店舗の運営に携わっています。記載した費用は実際の運営経験と、2026年9月時点の各社公式情報にもとづきます。料金は変更される場合がありますので、契約前に必ず公式サイトをご確認ください。


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