※ 制度や各サービスの情報は2026年9月時点のものです。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
ネットショップを始めたいと思ったとき、最初に困るのは「何から手をつければいいか分からない」ことです。調べると情報は出てくるのですが、開業届の話とショップ開設の話と写真の撮り方の話がバラバラに出てきて、順番が見えません。
この記事では、個人がネットショップを開いて最初の1件を発送するまでを、7つのステップに分けて順番に並べます。私自身、複数のブランドで自社ECとモール店舗の立ち上げに関わってきましたが、つまずくポイントはだいたい決まっています。そこも合わせて書きます。
全体の流れ
先に全体像を示します。ここだけ読めば、何をどの順でやるかは掴めます。
| ステップ | 目安の期間 | |
|---|---|---|
| 1 | 何を売るか決める | 数日〜数週間 |
| 2 | 開業届と青色申告承認申請書を出す | 1日 |
| 3 | 販売場所を決める(自社EC/モール) | 1〜3日 |
| 4 | ショップを開設する | 半日〜2日 |
| 5 | 法律まわりを整える | 半日 |
| 6 | 商品ページを作る | 商品数による |
| 7 | 発送体制を整える | 1〜2日 |
最短なら1週間で最初の1件を売れます。時間がかかるのはステップ1と6で、それ以外は事務作業です。
ここで一つだけ、順番について注意があります。ステップ2の開業届を後回しにしないでください。理由は後述しますが、期限があり、遅れると使えなくなる制度があります。
ステップ1:何を売るか決める
当たり前のようですが、ここが一番難しく、一番時間をかけるべきところです。
3つの調達パターン
| パターン | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 自分で作る | ハンドメイド、デザイン品、食品加工 | 作れるものがある人 |
| 仕入れる | 卸から買う、メーカーと取引する | 資金がある人、目利きができる人 |
| 作ってもらう | OEM、受託製造 | ある程度の資金とロットが必要 |
初めての場合、在庫を持たずに始められる形から試すのが安全です。受注生産、少量仕入れ、あるいは手持ちの1商品から。開業前に大量の在庫を抱えるのは、最も避けたい失敗です。
決める前に確認すること
- 販売に許可や資格が必要ないか — 食品なら食品衛生法にもとづく営業許可、中古品なら古物商許可、化粧品なら製造販売業許可。ここを確認せずに始めると、後から販売停止になります。
- 同じものを売っている人がいるか — いない場合、需要がない可能性を疑ってください。いる場合は、その人より何が良いのかを言えるかどうか。
- 利益が残るか — 販売価格から仕入れ、送料、決済手数料、梱包資材を引いて、いくら残るか。ここを計算せずに価格を決めると、売れるほど苦しくなります。
ステップ2:開業届と青色申告承認申請書を出す
ネットショップを事業として続けるなら、税務署に開業届を出します。費用はかかりません。
提出するもの
| 書類 | 正式名称 | 期限 |
|---|---|---|
| 開業届 | 個人事業の開業・廃業等届出書 | 事業開始から1ヶ月以内 |
| 青色申告承認申請書 | 所得税の青色申告承認申請書 | 開業から2ヶ月以内 |
開業届のほうは、遅れても罰則はなく受理されます。問題は青色申告承認申請書のほうです。
青色申告承認申請書の期限は絶対
青色申告の特別控除は最大65万円。所得税と住民税を合わせると、年20万円前後の差になります。
この控除を受けるには、開業から2ヶ月以内に承認申請書を出す必要があります(1月1日〜15日に開業した場合は、その年の3月15日まで)。期限を過ぎると、初年度は白色申告になり、65万円控除は使えません。
しかも遡って適用することはできません。1年待つことになります。だから開業届と同時に出してください。同じ窓口で、同じ日に、2枚出すだけです。
65万円控除の条件
申請書を出しただけでは65万円にはなりません。
- 複式簿記で記帳すること
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付すること
- e-Taxで申告する、または電子帳簿保存を行うこと
このどちらもしない場合は55万円、簡易簿記なら10万円です。差は小さくないので、会計ソフトを使い、e-Taxで申告すると決めてしまうのが早いです。会計ソフトは月1,000〜3,000円程度で、複式簿記を自動で作ってくれます。
提出方法
窓口持参、郵送、e-Taxのいずれか。すべて無料です。管轄の税務署は国税庁のサイトで検索できます。窓口なら30分程度で終わります。
※ 税制は変わります。詳細は国税庁のサイトを確認するか、税理士にご相談ください。
ステップ3:販売場所を決める
大きく2つ、あるいは両方です。
| 自社EC(ネットショップ) | モール(楽天・Amazon等) | |
|---|---|---|
| 集客 | 自分でやる。半年〜1年かかる | 初日から人が来る |
| 費用 | 月0円〜。手数料は低め | 出店料+手数料+広告費 |
| 顧客データ | 自分のものになる | モールのものになる |
| 自由度 | 高い | ルールに従う |
結論を先に言うと、初めてなら自社ECから始めるのが無難です。モールは初期費用と月額が発生し、売れなくてもかかり続けます。まず自社ECで「売れる商品か」を確かめてから、モールへ広げる順番のほうがリスクが小さくなります。
ただし、既に商品力に自信があり、初速を優先したいならモールという判断もあります。この選択はそれだけで一本の記事になるので、詳しくは別記事にまとめています。
あわせて読む:モール出店と自社EC、どちらから始めるべきか|両方運営して分かった判断軸
ステップ4:ショップを開設する
自社ECの場合、ネットショップ作成サービスを使います。STORES、BASE、カラーミーショップ、Shopifyなどです。
開設の手順
- サービスに会員登録する
- ショップ名とURLを決める
- デザインテンプレートを選ぶ
- 決済方法を設定する
- 送料と配送方法を設定する
- 特定商取引法に基づく表記を入力する(ステップ5で詳述)
ここは半日で終わります。時間をかけるべきところではありません。
最初はフリープランで十分
多くのサービスに無料プランがあります。無料プランは月額がゼロな代わりに決済手数料が高いのですが、月商17万円あたりまでは無料プランのほうが総額は安くなります。
開業前から有料プランを契約する必要はありません。売れ始めてから切り替えてください。プラン変更は管理画面から数クリックでできます。
あわせて読む:ネットショップ開業にかかる費用の全内訳|実際に運営して分かった「見落とす費用」
あわせて読む:ネットショップ作成サービス6社を「料金構造」で比較|月商いくらでどれが安いか
決める前に見るべきこと
サービス選びで見るべきは、デザインの豊富さではなく次の3つです。
- 決済手数料(1件あたりの固定額が乗るかどうかも含めて)
- 使いたい決済手段があるか(コンビニ払い、後払い、キャリア決済)
- 将来モールと併売したときに在庫連携できるか
デザインは後から変えられますが、手数料の構造は変えられません。
この3点を実際の管理画面で確かめたいなら、会員登録が無料のサービスで先に中身を見るのが早いです。たとえばカラーミーショップは無料登録だけで管理画面を触れるので、決済手段の一覧や在庫の持ち方を開業前に確認できます。→ カラーミーショップの無料会員登録
ステップ5:法律まわりを整える
ネットショップは、開いた時点で「通信販売事業者」になります。義務が3つ発生します。
特定商取引法に基づく表記
特定商取引法施行規則により、販売業者の氏名(または名称)、住所、電話番号の表示が必要です。個人でも、副業でも同じです。
「自宅の住所を書きたくない」という声はよくあります。これについては、消費者庁が一定の条件下で、バーチャルオフィスやプラットフォーム事業者の住所・電話番号での表示を認めています。条件があるので、詳しくは別記事に整理しました。
あわせて読む:特定商取引法の住所表記、個人は自宅を書かないといけない?省略できる条件を整理
このほか、表記には販売価格、送料、支払方法、引渡時期、返品の可否と条件を含めます。返品の条件を書いていないと、購入者は8日以内なら返品できることになります。ここは特に確認してください。
プライバシーポリシー
購入者の氏名・住所・メールアドレスを取得するので、個人情報の取扱いを明示します。多くのカートサービスにテンプレートが用意されています。
景品表示法
商品説明で、実際より著しく優良に見せる表現は禁止されています。「日本一」「効果があります」といった表現は、根拠がなければ書けません。健康食品や化粧品は、薬機法の規制も加わります。
ステップ6:商品ページを作る
売れるかどうかは、ほぼここで決まります。開業準備で最も時間をかけるべき工程です。
写真
商品ページで最初に見られるのは写真です。文章ではありません。
必要なのは4種類です。
- 正面から全体が分かる写真(サムネイルになる。最重要)
- サイズ感が分かる写真(手に持った、他のものと並べた)
- 細部が分かる写真(質感、縫製、素材)
- 使っている場面の写真(生活の中でどう見えるか)
機材はスマートフォンで十分です。必要なのは、白い背景と、窓からの自然光と、三脚だけ。合わせて5,000円もかかりません。
撮影で最も差が出るのは光です。蛍光灯の下ではなく、晴れた日の窓際で、直射日光を避けて撮ってください。それだけで見違えます。
説明文
説明文で書くべきことは、スペックではなく購入者が知りたいことです。
- サイズと重さ(数値で)
- 素材
- 手入れの方法
- 誰に向いているか、向いていないか
- 届くまでの日数
「向いていない人」を書くのを怖がらないでください。書いたほうが返品が減り、結果的にレビューも良くなります。
価格
原価に利益を乗せるだけでは決まりません。送料、決済手数料、梱包資材、返品率を織り込みます。
送料を購入者負担にするか、商品価格に含めるかは、購入率に大きく影響します。「送料無料」と書けるほうが売れますが、その分は価格に乗ります。扱う商品の価格帯で判断してください。
実際にやってみて分かったこと
効いたのは、比較表とレビューでした。
商品の説明を丁寧に書き足すよりも、「他の選択肢と何が違うのか」が一目で分かる表を置いたほうが、買われやすくなった感触があります。サイズ違い・タイプ違いを並べた表でも構いません。購入者は「これでいいのか」を確かめたくて迷っているので、比較の材料を先に出してあげると決めやすくなります。
レビューも同じです。件数が少なくても、載っているだけで違います。最初の数件をどう集めるかは、開店前に考えておく価値があります。
ステップ7:発送体制を整える
売れてから考えると間に合いません。1件目が来る前に決めておきます。
決めておくこと
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 配送業者 | ヤマト、佐川、日本郵便のどれを使うか |
| 発送方法 | ネコポス、ゆうパケット、宅急便など、商品サイズに応じて |
| 梱包資材 | 箱・封筒のサイズ、緩衝材、テープ |
| 発送のタイミング | 毎日か、週2回か。何時までの注文を当日発送にするか |
| 送り状の発行方法 | 手書きか、システム連携か |
梱包資材は少量から
まとめ買いは、商品サイズが確定してからにしてください。単価は確かに安くなりますが、サイズが合わなければ意味がありません。
配送料は箱のサイズで決まります。中身に対して箱が大きいと、緩衝材も送料も余分にかかります。最初は数種類を少量ずつ買って、実際に詰めてみて決めるのが結局は安上がりです。
発送タイミングは固定する
「注文が来たらすぐ発送」は、件数が増えると破綻します。「◯時までの注文は当日発送、それ以降は翌営業日」と決めて、商品ページに書いてください。購入者にとっても、そのほうが安心です。
実際に詰まったところ
最初に破綻したのは、在庫の数字でした。
ズレる原因は注文だけではありません。B品(傷や汚れのある商品)と返品が入ってくると、そこでズレます。返品された商品をそのまま在庫に戻していいのか、B品として分けるのか。ここを決めていないと、帳簿上の在庫と実際に売れる在庫が食い違っていきます。
対処はシンプルで、A品とB品を最初から別の場所に置き、別の数字で管理することです。同じ棚に混ぜないでください。返品が来たらまず検品して、どちらに入れるかを決める。この一手間を省くと、後で必ず「在庫はあるはずなのに出せない」状態になります。
始めてから最初につまずくところ
準備が終わって売り始めると、次の壁が来ます。先に知っておくと対処が早くなります。
1. まったく人が来ない
自社ECは、開設しただけでは誰も来ません。検索から人が来るには半年から1年かかります。最初はSNS、既存の知人、あるいはモール併売で流入を作る必要があります。「開いたのに売れない」ではなく「まだ誰も知らない」だけです。
2. 受注処理が思ったより手間
1日数件なら問題ありませんが、1日20件を超えたあたりから手作業では回らなくなります。受注確認、在庫の引当、送り状の発行、発送通知。この工程を最初から効率化しておくと、後が楽になります。
あわせて読む:EC受注業務が回らなくなる境界線と、その前にやるべき効率化
3. 在庫が合わない
自社ECとモールを併売すると、在庫の二重管理が発生します。片方で売れた分をもう片方で減らし忘れると、在庫がないのに注文が入ります。併売を始める前に、在庫管理の方法を決めてください。
まとめ
- 順番は「商品 → 開業届 → 販売場所 → ショップ開設 → 法律 → 商品ページ → 発送体制」
- 青色申告承認申請書は開業から2ヶ月以内が絶対期限。開業届と同時に出す
- 65万円控除には複式簿記とe-Taxが必要
- ショップ開設は半日で終わる。時間をかけるべきは商品選びと商品ページ
- 特定商取引法の表記は個人でも義務。返品条件の記載を忘れない
- 写真は正面・サイズ感・細部・使用場面の4種類
- 発送体制は1件目が来る前に決めておく
最短なら1週間で始められます。ただし「始める」と「売れる」は別です。最初の数ヶ月は誰も来ない前提で、その間に商品ページを磨いてください。
あわせて読む:ネットショップ開業にかかる費用の全内訳|実際に運営して分かった「見落とす費用」
この記事について
筆者はWebマーケティング・EC運営のフリーランスとして、複数のブランドで自社ECおよびモール店舗の運営に携わっています。制度に関する記述は2026年9月時点の一般的な整理であり、税務・法務の判断は専門家にご確認ください。

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