この記事の結論
- 小規模事業者持続化補助金で2者以上の見積(相見積)が必要になるのは、経費区分ごとではなく「発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)」のとき。公募要領はこの判定を発注の単位で書いている。
- ECサイトの発注では50万円の境界が2つあり、しかも税の扱いが違う。相見積は税込50万円超、処分制限財産は税抜50万円以上(=税込55万円)。1つの発注で片方だけに該当することがある。
- ウェブサイト関連費は補助金の申請額が30万円(税込)で天井なので、税込45万円の発注で補助金は最大になる。それ以上かけても補助金は増えないのに、税抜50万円(税込55万円)を超えると5年の処分制限が付く。
- 中古品は金額に関わらず2者以上の見積が必須で、しかも理由書を出して随意契約にする方法が一切認められない。中古のPCや撮影機材を計上するなら、見積を2者そろえられるかが対象可否を決める。
- 相見積は補助事業者自身が別々の企業から取得すると明記されている。制作会社に「もう1社分も用意してください」と頼んで形を整えるやり方は、公募要領の求めている取り方ではない。
※2026年10月13日時点。「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」をもとに作成しています。申請前に必ず最新の公募要領を確認してください。
相見積の判定は「経費区分」ではなく「1件あたりの発注総額」
補助金でECサイトを作るとき、見積の話は「制作費が高くなりそうなら2社から取る」という程度の理解で済ませてしまいがちです。ところが公募要領の書き方を読むと、判定の単位が思っているものと違います。
小規模事業者持続化補助金の公募要領は、発注先選定の相見積について「補助事業における発注先(委託先)の選定にあたっては、発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)を要するものについては、2者以上から見積を取り、より安価な発注先(委託先)を選んでください」と定めています。
ここで判定されているのは「ウェブサイト関連費が50万円を超えたか」ではなく「1件の発注の総額が50万円を超えたか」です。経費区分は申請書の中の分類であって、発注の単位とは一致しません。制作会社1社に、サイト制作(ウェブサイト関連費)と商品撮影(広報費)とチラシ制作(広報費)をまとめて頼めば、それは1件の発注です。区分ごとに切って見れば50万円に届いていなくても、発注総額では超えていることが起こります。
逆の形もあります。サイト制作を60万円で1社に発注したものの、申請上はウェブサイト関連費の上限に収まる範囲しか計上していない。この場合でも発注総額は60万円なので、相見積は必要です。計上額ではなく発注額で考えるのが公募要領の読み方です。
50万円の境界が2つある。しかも税の扱いが違う
ECサイトの発注で厄介なのは、公募要領に50万円という数字が2か所出てくることです。そして、片方は税込、もう片方は税抜で書かれています。
- 相見積(2者以上の見積):発注総額(1件あたり)が50万円超(税込)
- 処分制限財産:ウェブサイトおよびシステムを50万円(税抜き)以上の費用で作成・更新する場合
処分制限財産に該当すると、公募要領の記述では「補助事業が終了し、補助金の支払を受けた後であっても、一定の期間(通常は取得日から5年間)において処分(補助事業目的外での使用、譲渡、担保提供、廃棄等)が制限されることがあります」という状態になります。処分制限期間内に処分する場合は補助金事務局への承認申請が必要で、承認を得ずに処分すると交付規程違反として補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象になると書かれています。何が「処分」に当たるのか、リニューアルは制限されるのかは補助金で作ったECサイトは5年間いじれないのかで交付規程の条文から整理しています。
税抜50万円は税込55万円です。つまり発注額の帯によって、どちらに該当するかが変わります。
| 発注額(税抜) | 発注額(税込) | 2者以上の見積 | 処分制限財産 |
|---|---|---|---|
| 40万円 | 44万円 | 不要 | 該当しない |
| 45万円 | 49万5,000円 | 不要 | 該当しない |
| 46万円 | 50万6,000円 | 必要 | 該当しない |
| 49万円 | 53万9,000円 | 必要 | 該当しない |
| 50万円 | 55万円 | 必要 | 該当(通常は取得日から5年間) |
※消費税10%として計算した例です。
注目してほしいのは真ん中の帯です。税抜46万円から49万円台の発注は、相見積が必要なのに処分制限財産には該当しません。「2社から見積を取るような規模なら5年縛りも付くのだろう」と考えると、ここで判断を間違えます。逆に、この2つを同じ閾値だと思って「税込55万円までは見積1社でいい」と考えるのも誤りです。境界は別々に効きます。
補助金が増えないのに制限だけ増える区間がある
ここに、持続化補助金のウェブサイト関連費の上限を重ねると、もう一段はっきりします。公募要領は「当経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)です」と定めています。経費の上限ではなく補助金の上限が30万円で、通常枠の補助率は2/3です。
逆算すると、ウェブ関連の経費を税込45万円かけた時点で補助金は30万円に到達します。それ以上かけても補助金は増えません。この45万円という数字と、さきほどの2つの境界を並べるとこうなります。
| ウェブ関連の発注額(税込) | 受け取れる補助金 | 相見積 | 処分制限 |
|---|---|---|---|
| 45万円 | 30万円(上限に到達) | 不要 | 該当しない |
| 50万円 | 30万円(増えない) | 不要(50万円は「超」ではない) | 該当しない |
| 55万円 | 30万円(増えない) | 必要 | 該当 |
| 80万円 | 30万円(増えない) | 必要 | 該当 |
つまり税込45万円を超えた部分は、補助金を1円も増やさないまま、相見積の手間と5年の処分制限を順番に増やしていく区間です。もちろん事業として必要なサイトならその金額をかける判断はあり得ますし、ウェブサイト関連費に収まらない部分を他の経費区分で計上する設計も成り立ちます。ただ「補助金が出るから手厚く作る」という動機でこの帯に入っていくなら、得られるものは増えていないという事実は見ておいたほうがいいです。
なお、ウェブサイト関連費については「ウェブサイト関連費のみによる申請はできません。必ず、ほかの経費と一緒に申請してください」という条件もあります。ECサイトを作ることを目的にこの補助金を申請する組み立て方は、そもそも成立しません。制度の全体像は小規模事業者持続化補助金でECサイトは作れるかで整理しています。
中古品は金額に関わらず2者必須。しかも理由書が使えない
相見積にはもう一つ、金額とは無関係に発動する条件があります。中古品です。
公募要領は、中古品の購入について「金額に関わらず、すべて、2者以上からの見積が必須となります」と定めています。さらに「2者以上の中古品販売事業者(個人からの購入や、オークション(インターネットオークションを含みます)による購入は不可)から同等品について見積(見積書、価格表等)の取得が必要です」とあり、購入単価が50万円(税抜き)未満であることも条件です。単価50万円(税抜き)以上の中古品を50万円未満になるように分割して購入する場合は、その中古品全体が補助対象外になると明記されています。
そして決定的なのがここです。通常、見積を取ることが困難な場合は随意契約の理由書を提出する道があるのですが、中古品については「理由書の提出による随意契約での購入は、一切認められません」と書かれています。
ECの現場では、撮影用のカメラやライト、検品・梱包用の什器、作業用PCといったものを中古で安く揃える発想は自然です。しかし補助金に計上するなら、中古品販売事業者2者から同等品の見積が取れるかどうかが、そのまま対象になるかどうかを決めます。個人からの購入とネットオークションは入口の段階で不可なので、「フリマアプリで型落ちを安く買う」という選択は補助対象の外に出ます。新品で買ったほうが結果的に話が早い、という判断になる場面は珍しくありません。
見積は「自分で」「別々の企業から」取る
相見積の取り方についても、公募要領は踏み込んで書いています。
「相見積は価格の妥当性を確認するために提出を求めるものです。公的な資金を活用しての事業であることも踏まえ、必ず補助事業者自身が別々の企業から取得するようにしてください。金額が市場価格から著しく乖離しているなど、社会通念上価格が妥当ではないと判断される経費につきましては補助対象外となります」
ここで否定されているのは、本命の制作会社に「比較用の見積も一緒にお願いします」と頼んで形式を整えるやり方です。制度の目的は価格の妥当性の確認なので、同じ相手が用意した2枚では確認になりません。手間はかかりますが、2社に別々に問い合わせるところからやる必要があります。
見積書の中身についても条件があります。公募要領は「支出内容が不明確なものは認められません。見積金額に複数の項目が含まれる場合は、その内訳を示してください」としています。ECサイトの見積は「サイト制作一式 60万円」という書き方で出てくることがありますが、これだと内訳がありません。デザイン、構築、商品登録、撮影、初期設定といった単位に分けて書いてもらうよう、見積依頼の段階で伝えておくのが実務です。
調達の流れについても、電子商取引に関する項で「補助金で求められる、仕様提示、見積、発注、納品、検収、請求、支払といった流れで調達を行い、適切な経理処理の証拠となる書類(取引画面の写し等)を整理・保存・提出ができることを把握してから取引をしてください」と書かれています。見積の前に仕様提示があるという順番です。何を作ってほしいかを文書で出し、それに対する見積をもらう。この順番が崩れると、2社の見積が同じものに対する見積なのかどうかが説明できなくなります。
見積が本当に取れないときの随意契約
中古品以外については、逃げ道が用意されています。公募要領は「発注(委託)する事業内容の性質上、見積を取ることが困難な場合は、該当企業等を随意契約の対象とする理由書を採択発表後交付決定までにご提出ください」としています。
条件は「事業内容の性質上、見積を取ることが困難」であることです。独自の特許技術を持つ1社しか対応できない、地域に事業者が1社しかない、といった事情が想定されます。「探すのが面倒だった」「付き合いのある会社に頼みたい」は理由になりません。ECサイトの制作は対応できる事業者が多数いる領域なので、この理由書で通る場面は限られると考えておくほうが安全です。
提出のタイミングは「採択発表後交付決定まで」です。採択されてから慌てて考える話ではあるものの、申請の段階で「この経費は相見積が必要になる規模か」を把握しておかないと、採択後の短い期間に見積集めが集中します。
見積はいつ出すのか。発注してよくなるのはいつか
見積の提出タイミングは、採択のあとです。公募要領は「採択発表後交付決定までに、経費の価格の妥当性を証明できる見積書等(相見積含む)の提出が必要です」と定め、さらに「採択後は、計上しているすべての経費について見積書等を提出いただき、補助金事務局での審査を経て交付決定となります」と書いています。第20回公募の見積書等提出期限は2028年2月29日(火)で、この期限までに提出がなされていない場合は採択取消しとすると注記されています。
交付決定までの期間については「交付決定には、採択後、詳細な見積書が速やかに提出された場合でも、採択発表から概ね1〜2か月かかる場合があります」とあります。見積の提出が遅れれば、その分だけ交付決定も遅れます。そして交付決定が出るまでは発注できません。
| 段階 | できること |
|---|---|
| 申請前 | 仕様を整理する。相見積が必要になる規模かを見積もる |
| 申請〜採択発表 | 仕様提示をして見積を集める(見積を取る行為は発注ではない) |
| 採択発表〜交付決定 | 見積書等を提出する。随意契約の理由書が必要ならここで出す |
| 交付決定後 | 発注・契約・支払い。ここまでは1円も支出できない |
見積集めを採択後に始めると、交付決定が遅れ、その分だけ制作に使える期間が削られます。見積を取ること自体は発注ではないので、申請してから採択発表を待つ間に進めておけます。発注タイミングの制約そのものは補助金でECサイトを作るときの発注タイミングで詳しく扱っています。
なお第20回公募の申請受付は2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00で、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は2026年12月4日(金)です。補助事業の実施期限は交付決定日より2028年3月31日まで、実績報告の提出期限は2028年4月10日とされています。
見積の手間を含めて、補助金を使うかどうかを決める
ここまで整理すると、持続化補助金でECサイトを作るときの見積まわりの作業量が見えてきます。2社に別々に問い合わせ、仕様を文書で渡し、内訳の入った見積をもらい、採択後に提出する。中古品を混ぜるなら販売事業者2者分の見積が必要で、オークションや個人からの購入は使えません。
そのうえで受け取れる補助金は、ウェブサイト関連費については30万円が上限です。この作業量と30万円を見比べて「見積を集めるくらいなら、まず小さく始めて売れるかどうかを確かめたい」と判断するのは、十分に合理的な選択です。月額の安いカートで始めて、売れることを確認してから次の公募で本格的なサイトに投資する順番なら、相見積の制約を一度も踏まずに始められます。ネットショップ作成サービスの比較で、無料から始められるものを含めて月額と手数料を並べています。
補助金を使う場合でも、見積の要件は申請書を書き始める前に知っておく種類の情報です。発注の形を決めてから見積の要件を知るのではなく、見積の要件を踏まえて発注の形を決めるほうが、手戻りが起きません。
ECサイト制作・補助金の活用を相談したい方へ
「この発注の組み方だと相見積が必要になるのか」「ウェブサイト関連費の上限を踏まえてどこまで補助金で賄えるのか」といったご相談を承っています。申請書類の作成が必要な場合は、行政書士をご紹介します。


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