※ 発送代行の料金は各社とも公開されていません。この記事の金額は、発送代行事業者が公開している費用相場を複数突き合わせた中央付近の数字です(2026年9月時点)。実際の見積もりは条件によって変わります。
「月100件を超えたら発送代行を検討しましょう」
発送代行の記事にはたいていこう書いてあります。計算すると、この目安は成立しません。
分岐点を決めるのは出荷件数ではありません。自分の1時間をいくらと置くかです。そこを決めないと、何件出していても答えは出ません。
結論:時給1,500円以下なら、何件出しても外注は割高
1件あたり7分で梱包・発送できているとして、自分の時給別に分岐点を計算しました。
| 自分の時給 | 自前の1件コスト | 外注との差 | 分岐点 |
|---|---|---|---|
| 1,000円 | 217円 | −56円 | 成立しない(何件でも自前が安い) |
| 1,500円 | 275円 | +2円 | 月13,000件 |
| 2,000円 | 333円 | +60円 | 月431件 |
| 2,500円 | 392円 | +119円 | 月219件 |
| 3,000円 | 450円 | +177円 | 月147件 |
| 4,000円 | 567円 | +294円 | 月89件 |
自分の時間を時給1,000円と置くなら、外注は何件出しても割高になります。外注の1件あたり変動費273円を、自前コストが下回り続けるからです。
逆に時給4,000円と置けば月89件で逆転します。同じ店、同じ件数でも、置く時給しだいで答えが変わる。だから「月100件」のような件数の目安には意味がありません。
発送代行の料金は公開されていない
まず前提から。発送代行サービスは、料金表を公開していません。
業界最大手のオープンロジも、公式サイトには「初期費用・固定費ゼロ」「従量課金制」とあるだけで、具体的な単価は出てきません。書かれているのはこれです。
詳しい料金形態については、資料をダウンロードの上でご検討ください
理由は単純で、倉庫のコストは商材のサイズ・SKU数・出荷波動で大きく変わるからです。同じ月100件でも、アクセサリー100件とアウター100件では保管面積が10倍違います。
したがって、この記事の数字も「相場」でしかありません。発送代行各社が自社ブログで公開している相場を突き合わせると、だいたいこの範囲に収まります。
| 費用項目 | 相場 |
|---|---|
| 初期費用 | 0〜50,000円 |
| 月額基本料・システム利用料 | 10,000〜30,000円/月 |
| 保管料 | 4,500〜7,000円/坪・月 |
| 入庫料 | 16〜40円/点 |
| ピッキング料 | 10〜30円/点 |
| 梱包料(資材費込のことが多い) | 150〜300円/件 |
| 配送料 | 300円〜/件 |
| 返品処理 | 200〜500円/件 |
太字が固定費です。ここが効きます。出荷ゼロの月でも、基本料と保管料は出ていきます。
自前のコストを正しく数える
比較するには、自分でやっている場合のコストを出さないといけません。ここを「0円」と思っているうちは判断できません。
自前の1件あたりコストは2つです。
自前コスト = 梱包資材費 + 作業時間 × 自分の時給配送料は両方にかかるので、比較からは外します。外注しても配送料は別途かかるので、比べるべきは「梱包・作業・保管」の部分だけです。
資材費は1件100円前後。ここはネットショップ開業にかかる費用の全内訳で触れたとおり、箱をぴったりサイズで選ぶと緩衝材が入らないので、各面2cmの余裕を見たサイズになります。
問題は作業時間のほうです。ピッキング、梱包、伝票、発送手配で1件7分。これは慣れた人の数字です。慣れていなければ10分を超えます。
計算してみる
外注の1件あたり変動費は、入庫28円+ピッキング20円+梱包225円で273円(相場の中央付近)。固定費は基本料20,000円+保管1坪6,000円で月26,000円とします。
分岐点の件数 = 外注の月額固定費 ÷(自前の1件コスト − 外注の1件コスト)時給2,000円・7分/件なら、自前は333円。差は60円。
26,000円 ÷ 60円 = 433件/月月間出荷件数で並べるとこうなります(時給2,000円・7分/件)。
| 月間出荷件数 | 自前 | 外注 | 差 |
|---|---|---|---|
| 30件 | 10,000円 | 34,190円 | +24,190円 |
| 100件 | 33,333円 | 53,300円 | +19,967円 |
| 300件 | 100,000円 | 107,900円 | +7,900円 |
| 500件 | 166,667円 | 162,500円 | −4,167円 |
| 1,000件 | 333,333円 | 299,000円 | −34,333円 |
月100件では、外注のほうが月2万円高い。よく見る「月100件が目安」は、この条件では逆です。
作業時間を縮めるほうが、外注より効くことがある
同じ時給2,000円で、1件あたりの作業時間だけ変えてみます。
| 1件あたり | 自前コスト | 分岐点 |
|---|---|---|
| 4分 | 233円 | 成立しない |
| 5分 | 267円 | 成立しない |
| 7分 | 333円 | 月431件 |
| 10分 | 433円 | 月162件 |
| 15分 | 600円 | 月80件 |
7分を5分に縮めるだけで、外注する理由が消えます。
2分の短縮は難しくありません。資材サイズを2種類に絞る、伝票をまとめて出力する、発送タイミングを1日1回に固定する。このあたりはEC受注業務が回らなくなる境界線と、その前にやるべき効率化で整理しました。
外注を検討する前に、まず自分の1件あたり時間を測ってください。測っていない人が大半です。
ただし、時給に現れないものがある
ここまでは費用の話です。実際の判断は費用だけでは決まりません。
発送に1日2時間取られている状態は、単に2時間分の人件費ではありません。その2時間があれば仕入れを探せる、商品ページを直せる、広告を回せる。売上を作る側の時間が消えているということです。この損失は時給には出てきません。
逆に言えば、発送を外注しても空いた時間を売上づくりに使わないなら、月2万円を捨てているだけになります。外注は時間を買う取引なので、買った時間の使い道が決まっていないと成立しません。
外注して初めて困ること
実務で効いてくる注意点を1つ。
自分で発送しなくなると、在庫のズレが見えなくなります。
ネットショップの在庫数が狂う原因は、注文だけではありません。返品が戻ってくる、B品が出る、検品で弾く。自分で荷物を触っていれば「数が合わない」に気づけますが、倉庫に預けると帳簿の数字しか見えなくなります。
外注するなら、A品とB品を最初から別のSKUとして登録し、返品が戻る先も決めておくこと。倉庫は指示されたとおりにしか動きません。自分の頭の中にあったルールを、全部言語化して渡す必要があります。
これは外注の欠点ではなく、外注の準備コストです。ここを見積もりに入れておかないと、移行直後に必ず詰まります。
見積もりを取るときに必要な数字
料金が公開されていない以上、自分の条件で見積もりを取るしかありません。
聞かれるのはこの5つです。事前に用意しておくと話が早く進みます。
- 月間出荷件数(直近3ヶ月の実績。繁忙期があればその月も)
- SKU数(A品・B品を分けるなら分けた数で)
- 商品のサイズと重量(最大・最小・いちばん多いもの)
- 必要な保管量(何坪必要かは倉庫側が計算します。箱数で伝えれば足ります)
- 同梱物やギフト包装の有無(1点あたり5〜30円かかります)
複数社に同じ条件を出して比べないと、相場が適正かどうか判断できません。1社だけの見積もりでは、高いのか安いのか分かりません。
見積もりを取ること自体が判断材料になります。上の計算で「外注は割高」と出た人も、実際の単価が相場より安ければ答えは変わります。
まとめ
- 「月100件を超えたら外注」という目安は成立しない。分岐点は件数ではなく自分の時給で決まる
- 自分の時間を時給1,000〜1,500円と置くなら、外注は何件出しても割高になる
- 時給2,000円・7分/件なら分岐点は月431件。月100件では外注のほうが月2万円高い
- 1件7分を5分に縮めれば、外注する理由が消える。まず自分の作業時間を測る
- 発送代行の料金は各社とも非公開。オープンロジも「資料をダウンロードの上でご検討ください」
- 固定費(基本料10,000〜30,000円+保管料4,500〜7,000円/坪)は出荷ゼロの月も出ていく
- 外注は時間を買う取引。空いた時間の使い道が決まっていないなら成立しない
- 外注すると在庫のズレが見えなくなる。A品とB品を分けて登録し、返品の戻り先を決めてから移行する
発送代行を検討するとき、最初にやるべきは資料請求ではありません。ストップウォッチで1件あたりの時間を測ることです。その数字がないと、見積もりが届いても判断できません。
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この記事について
筆者はWebマーケティング・EC運営のフリーランスとして、複数のブランドで自社ECおよびモール店舗の運営に携わっています。発送代行の料金は各社とも公開されていないため、本文の金額は発送代行事業者が公開している費用相場を複数突き合わせた中央付近の数字です。実際の見積もりは商材・SKU数・出荷波動によって大きく変わります。契約前に必ず複数社から見積もりを取り、自分の条件で計算し直してください。


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